| 要旨トップ | ESJ69 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S24 3月19日 9:00-12:00 Room E, オンライン開催/見逃し配信対応/現地会場あり
あらゆる植物には、地下部に限らず地上部にも多くの微生物(おもに真菌・細菌)が存在し、器官特有の微生物叢を作り上げ、植物の生存や成長を大きく左右している。花や種子など植物の繁殖器官の微生物の役割や植物との相互作用についても、とくに農作物やモデル植物で近年さかんに報告され注目されている。
生態学において花の微生物に着目する魅力は、他の相互作用と密接に関連する点、植物の世代を超え伝播する点にある。動物媒花にとって花は送粉共生の場であるが、動物の訪花は花上の微生物にとっては重要な分散、伝播の機会となっている。訪花者によってもたらされた微生物は、花蜜や花香を変化させて訪花者群集にフィードバックをもたらしたり、植物に病原性を示したり、反対に病原菌への抵抗性を付与したりと、多様な影響を与えうる。加えて、訪花者によってもたらされた微生物や母植物由来の微生物の一部は、種子へと伝播する。この種子内生菌は、発芽後の実生の生育や病気への感受性にも影響を与える。こうした植物繁殖器官での相互作用は、植物や微生物に生態的・進化的な影響を与え、また送粉共生などの他の生物間相互作用においても重要な役割を果たしている可能性がある。
花・種子の微生物研究は、農学分野では特定の微生物が植物に与える影響に注目して、生態学では微生物群集とそれを決める要因に焦点を当てて研究されてきたが、この2つの流れをつなぐような試みも始まっている。本シンポジウムでは、双方から5名の講演者をお招きし、花・種子の微生物叢や植物との相互作用について話題提供していただく。これまで生態学ではあまり注目されてこなかった花・種子の微生物研究のいろいろなテーマやアプローチ、その重要性やおもしろさを紹介するとともに、今後の研究の方向性についても議論したい。
コメンテーター:望月 昂(東京大)、門脇 浩明(京都大)
[S24-1]
植物病のパンデミックを生み出す花や種子
Flowers and seeds causing "pandemic plant diseases"
[S24-2]
イネにおける種子内生菌の耐病性への関与
Seed endophyte modulate disease resistance in rice
[S24-3]
開花と昆虫の訪問に関連したゴーヤの花の真菌群集の変化
Changes in the fungal community assemblages on bitter gourd flowers associated with anthesis and insect visits
[S24-4]
植物群落内に見る花圏細菌叢の多様性とその要因
Factors that drive variation among flower bacterial compositions within a plant community
[S24-5]
分散距離と群集集合の意外な関係
Dispersal distance and community variability