| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S24-4 (Presentation in Symposium)
近年、植物の花上微生物が様々な形で植物の繁殖成功に影響を与えることが報告されており、花の生態や進化に大きな影響を持っている可能性が考えられる。しかしながら、花上微生物を植物群落スケールで比較した研究は少なく、花上微生物が群落内の植物種間でどのように共有されているのかは明らかでない。本発表では滋賀県大津市の植物群落内に生育する29植物種の花上細菌叢を調べた研究結果を紹介する。16Sアンプリコンシーケンスの結果、花上細菌の群集組成は植物種間で明瞭に異なっている一方で、個々の細菌ASVの多くは複数の植物種間で共有されていることがわかった。植物種に対する細菌の特異性には、ほぼすべての植物(26/29)種に検出されるジェネラリスト的な細菌から、ほぼ1種の植物のみで検出されるスペシャリスト的な細菌まで大きなばらつきがみられ、花上細菌の中にも幅広い生態が存在することが示唆された。こうした特異性は細菌の科ごとに有意に異なっていた一方で、ジェネラリストやスペシャリストとみられる細菌は幅広い科に混在しており、植物種特異性に関わる生理的・生態的な要因はさらに系統的に細かいレベルで異なっている可能性が考えられる。