| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S27-4  (Presentation in Symposium)

植物表現型解析システムRIPPSによる植物の成長変動の解析
Analysis of plant growth fluctuations using the automated plant phenotyping system RIPPS

*藤田美紀(理化学研究所)
*Miki FUJITA(RIKEN)

植物を取り巻く環境要因は、光、温度、水、栄養素など多岐にわたっており、個々の要因が複雑に絡み合って、植物の成長に影響を与えている。我々は、環境を精密にコントロールした生育条件下で植物の成長応答を経時的に観察する自動フェノタイピングシステムRIPPS(RIKEN Integrated Plant Phenotyping System)(Fujita et al., 2018) を用いて、植物のストレス応答に関わる表現型解析を進めている。RIPPSは、ベルトコンベアでポットを循環させて重量計測と給水量の計算および給水を自動で行い、経時的な成長画像を記録する装置である。ポットの水分含量は、さまざまなパターンで個別に制御することが可能であり、ストレスの強度やタイミングを自由に設定して解析できる。
我々はRIPPSを用いて、南アンデス原産の穀物であるキヌア(Chenopodium quinoa)の表現型解析を進めている。キヌアは、海岸付近の温暖湿潤な地域から降雨量の少ない高地乾燥地域まで、幅広い環境条件で栽培されており、高い環境適応能力を持つことが知られている。キヌアの系統は、北部高地、南部高地、低地の3つの遺伝的サブグループに分類されることが明らかとなっている。我々はサブグループの中から代表的なキヌア系統を選抜し、様々な土壌水分変化に対する成長応答をRIPPSを用いて解析した。この結果、蒸散量および成長率の変動において各サブグループ毎に特徴的な形質が見いだされた。このように、環境に応答した形質の経時変化を詳細に解析することにより、キヌア系統の環境適応機構を明らかにできると考えている。
加えて、ダイズなどの大型作物の解析が可能な作物型CRIPPSの開発や、理研BRCで収集されているシロイヌナズナ野生型系統の形質評価に関する取り組みについて紹介する。


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