| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S27-6  (Presentation in Symposium)

植物フェノタイピングのためのIoT
IoT for plant phenotyping

*平藤雅之(東京大学)
*Masayuki HIRAFUJI(The University of Tokyo)

 農業における植物フェノタイピングのためのIoTには、個体・個体群・農場のレベルでの形質及び多様な環境条件に関する時系列データを自動収集することが望まれる。特に、生長速度・光合成速度等の形質データ、気温・CO2濃度等の環境データ、共生微生物等の生物群集データの時系列データを収集する必要がある。また、機械学習やリモートセンシング等のアプリ開発では、画像やリモートセンシングデータと同時に教師データやグランドトゥルースデータが必要であり、ここでも植物形質データの実測値が必要となる。こういった多様なデータからなるビッグデータの自動収集手法として、これまで野外設置用IoTデバイス(フィールドサーバ)を開発し、各地に設置してきた。ICTの進歩によってフィールドサーバは小型化・高機能化が進み、パーソナルファブリケーションによるIoTデバイスのカスタマイズや自作も容易になった。しかし、大規模圃場にIoTデバイスを大量に設置するとメインテナンス労力が膨大となった。また、農作業の際には、設置・撤去・再設置が必要となるという問題にも直面した。根本的な対応策としては、生分解性ナノテク素材を用いた超小型IoTデバイスを開発するという方法があるが、そのためのセンシング技術も開発する必要があり、すぐには利用できない。現行技術でビッグデータを収集する手法として、IoTデバイスを設置しやすい専用圃場(データファーム)を開発しているところである。また、これまでのIoTでは、少量のデータを少ない消費電力で伝送するLPWAが広く用いられているが、圃場における収集データ量を大幅に増やすにはエネルギー供給量も大幅に増やす必要がある。すなわち、ビッグデータ収集のボトルネックはエナジーハーベストにある。そこで、必要な電力をスケーラブルに供給可能なソーラー発電システムを開発し、圃場におけるエナジーハーベストに活用している。


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