| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W04-1  (Workshop)

雨が降ると樹木はどうやって濡れていくのか?
How do trees get wet when it rains?

*南光一樹(森林総研)
*Kazuki NANKO(FFPRI)

雨が降ると当然のことながら樹木は濡れる。本発表では、「雨滴」からの観点を踏まえながら、樹木の濡れ過程を紐解いていく。森林に降る雨は、まず葉や枝を濡らし樹冠に貯留される。その一部は蒸発や植物体への吸水で失われ、残りが樹冠通過雨や樹幹流として土壌に到達する。この樹冠遮断プロセスは、森林流域への水のインプットの最初の場であり、その量や配分比を明らかにすることが森林水文学の目的の一つである。雨の樹冠貯留には枝葉の量だけでなく葉や枝の撥水性や傾きといった枝葉の特性が影響を与え、その貯留量に差異を生む。樹冠通過雨は、枝葉に触れずに落ちてくる直達雨、枝葉で飛散して生じる飛沫雨、枝葉で集合してこぼれ落ちてくる滴下雨から構成される。各成分の雨滴の大きさに違いがあることを利用し、地表での雨滴測定データから、各成分の量を分離する手法を開発した。この手法を活用した、落葉広葉樹のフェノロジーに応じた樹冠通過雨の各成分の季節変化や、一雨の中で滴下雨を生成する枝葉の高さが上から下へと移動していく様子を紹介する。また、樹幹流の発生やその量の大小にかかる樹木特性の違いを示し、樹幹流が樹木周辺の土壌水分環境に与える影響の大きさを示す。本発表を通じて、降雨中に樹木の表面で濡れがどう進行していくのかを把握し楽しんでいただけたら幸いである。


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