| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
自由集会 W09-1 (Workshop)
日本には約5000箇所の鉱山跡地が存在し,一部の鉱山跡地では現在も高濃度の重金属が土壌中に存在している.植物は重金属を過剰に吸収するとクロロシス等の毒性症状を発現し,最終的に生育阻害を引き起こす.それゆえ,重金属を高濃度に含有する鉱山跡地土壌は,植物が重金属ストレスを受け易い環境であると考えられる.一方で,鉱山跡地には複数の自生植物種が確認されており,これらの植物は何らかの重金属耐性機構を有していると考えられる.近年,植物組織内に無病徴で感染する微生物 (内生菌) が,宿主植物の重金属ストレス耐性に関与することが知られている.中でも内生菌が産生するシデロフォア (金属錯体形成物質) が植物及び内生菌の重金属耐性において重要な機能を果たすことが報告されている.本発表では,鉱山跡地に自生し,細根に高濃度のZnを蓄積するアオキ (Aucuba japonica Thunb.) の重金属耐性,及び細根から分離された内生菌Pezicula ericaeが産生するシデロフォアの機能に関して発表を行う.
アオキの細根から分離されたP. ericaeの12菌株についてシデロフォア産生活性を評価したところ,全ての菌株でシデロフォア産生が確認された.P. ericaeのw12-25株のシデフォア産生活性が最も高く,種々のクロマトグラフィー,質量分析,核磁気共鳴分析から,P. ericaeの w12-25がキレート活性を示す新規化合物を産生することが明らかとなった.本化合物はキレート活性以外にも抗菌活性を示すことが確認され,複数の機能を有していることが明らかとなった.最終的に,滅菌アオキ実生及びP. ericaeのw12-25株を用いた接種試験の結果を基に,アオキが有する重金属耐性機構,及びP. ericae w12-25株の感染が調査地に自生するアオキの生育に与える影響を考察し,発表する.