| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
自由集会 W16-3 (Workshop)
SDGsに代表される持続的な社会システムの構築が求められている。農業分野においても持続的な食糧生産システム構築の動きが活発である。例えばEUでは、Farm to Forkにより、2030年までに化学農薬の利用、およびリスクを50%低減、有機農業を25%に拡大が掲げられた。日本においても、みどりの食糧システム戦略により、2050年までに化学農薬利用を50%低減、2030年までに有機農業を25%拡大することを目標にしている。
このような動向から、今後、地域資源としての生態系機能を活用した生産システムの構築が喫緊の課題でもある。害虫を抑制する天敵を有効活用する技術や、ポリネーションサービスを効率よく受けるための技術開発などはその代表的な研究であろう。しかしながら機能のみに着目してしまうと生物多様性保全への負の影響など、決して持続的ではない状況が生じてしまう。スクミリンゴガイによる雑草防除の試みがその典型的な事例であろう。
本報告では、環境保全との親和性が高いとされる有機農業のさまざまな営農活動について、片山ら(2020)を参考に、生物多様性保全効果をシステマティックレビューにより評価し、農業生態系依存種等の保全効果について可視化を行った結果をもとに議論したい。また、野外で調査された生物データを活用した全国レベル、および地域レベルの解析から、生態系機能の効果的な発揮は、その景観構造や立地によって、大きな違いがあるこが示された。景観構造を考慮しながら、生態系機能を活用する重要性について報告する。