| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-06 (Poster presentation)
2021年の私たちの研究で,多数のギンボシザトウムシが10月から11月にかけてオオヒメグモの巣に捕捉されることを発見した。この原因を解明するために,(1)ギンボシザトウムシの継続的な生態データの収集,(2)オオヒメグモの巣に捕捉されているギンボシザトウムシの分析(壁からの距離・脚の欠損数など),(3)ギンボシザトウムシがオオヒメグモの巣に捕捉される瞬間の撮影に挑んだ。これらにより,「なぜ,ギンボシザトウムシはオオヒメグモの巣に引っかかるのか?」を明らかにでき,ザトウムシの生態の解明にもつなげられると考えた。
鹿児島県立錦江湾高等学校内で採集したギンボシザトウムシの各脚の長さ・体長・残存数・欠損部位を分析したところ,7月に体長や各脚の長さが最大値に達していた。一方で,脚の残存数は10月までに7.15本に減少していた。オオヒメグモの巣に捕捉されたギンボシザトウムシは2022年10月8日に初めて確認され,10月30日には合計で158個体に達した。捕捉されていたギンボシザトウムシの壁からの距離を分析したところ,左壁から23.5cm,奥から15.7cm,右壁から20.1cmとなり,壁からの距離はギンボシザトウムシの脚より長いことが分かった。さらに,壁を上っていたギンボシザトウムシをビデオカメラで撮影しながら追い続けたところ,壁から落下し,その下部に張られたオオヒメグモの巣に捕捉される瞬間を映像で収めることができた。巣への捕捉後,ギンボシザトウムシとオオヒメグモの闘いが15分間続き,オオヒメグモの糸によってギンボシザトウムシは捉えられた。一方で,ギンボシザトウムシ自ら巣に近づいて脚が捕捉された場合では,そのほとんどが巣からの離脱に成功していた。
以上のことから,ギンボシザトウムシは4月から10月にかけて脚の欠損が進むことにより壁面上でからだを支える力が弱まり,壁面から落下し,下部に張られたオオヒメグモの巣に捕捉されることが本研究で明らかになった。