| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-08  (Poster presentation)

二次林におけるモミの更新条件と里山保全活動の影響【A】
Conditions on the regeneration of Abies firma and the reration of satoyama conservation activities【A】

*鈴木悠人, 弓削吏久, 小坪慎太郎, 笠村颯吾, 山崎優貴(海城中学高等学校)
*Yuto SUZUKI, Riku YUGE, Shintaro KOTSUBO, Sougo KASAMURA, Yuki YAMAZAKI(Kaijo school)

 モミ(Abies firma)は狭山丘陵に自生する常緑針葉樹であり、その高木にはオオタカの営巣が確認されている。埼玉県所沢市北野南二丁目保全地域の雑木林にはモミの高木が存在しており、幼木や実生も存在しているが、その分布は限られており、南北方向に存在する尾根の西側では胸高直径1㎝以上のものが11個体、東側では5個体であった。また、胸高直径1㎝未満の実生に関して、2020年2月では尾根の西側では106個体、東側では4個体であったが、2023年2月には尾根の西側では166個体、東側では14個体となっており、尾根の西側でモミが更新しやすいことが考えられた。ここで尾根の東側でのみ里山保全活動が行われていることから、里山保全活動によってモミの更新条件が整わないのではないかと考えられ、本研究では、里山保全活動がモミの更新に与える影響とその要因を明らかにすることを目的とした。
 モミの更新条件を調べるため、発芽から1〜2年目の弱齢木の1年後の生存と成長量について、相対的な光量・温度・土壌硬度に注目して調査を行った。弱齢木が1年後に生存した場所と枯死した場所では光量・地温には差が見られなかったが、土壌硬度は生存した場所でより低かった。また、冬季の最高温度は尾根の東側で西側よりも低かった。これが冬季の日光量が東側で大きいためと考え、個体ごとに冬季の相対的な光量を調べると、樹高の成長量とやや正の相関が見られた。里山保全活動の影響について、落ち葉掃きをした場所・常緑樹下とそうでない場所の環境をそれぞれ比較したところ、落ち葉掃きをした場所は土壌硬度が高く、常緑樹下は冬季の相対的な光量が低くそれぞれモミの生存に不適であることが考えられた。このことから、モミの弱齢木の生存や成長に里山保全活動が与える影響として、落ち葉掃きは好ましくなく、常緑樹の除伐は有効であると考えられた。


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