| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-13 (Poster presentation)
四肢動物の多くは音声を用いてコミュニケーションをとる。両生類では、音声コミュニケーションをとることが知られるカエル類で、音の選好についての研究が数多く報告されている。しかし、有尾類の音の選好についてはこれまで知見がない。筆頭発表者は、これまでの研究でアカハライモリ(以下、イモリ)に好きな周波数帯の音(630~2000 Hz)があることを明らかにし、この周波数帯を用いて、「イモリに捧げる曲(Music dedicated for newts;MDFN)」を作曲した。本研究では、自作したT字パイプと画像認識による行動観察システム(Behavior observation system using image recognition;BOS-IR)を用いて、MDFNと、曲に含まれる単音に対するイモリの選好性と行動を調べた。T字パイプ実験では、曲調を変えたMDFN(長調、短調)と、MDFN長調・短調に含まれる黒鍵と白鍵の単音(G#、C#、F#、G、C、F)を流したときにスピーカーの方に移動したイモリの数を記録した。BOS-IR実験では、MDFN(長調、短調)と単音(F#、F)を流したときの5分間のイモリの総移動距離を求めた。T字パイプ実験から、イモリはMDFN短調よりもMDFN長調を好み、単音ではFよりもF#を好むことが示された。BOS-IR実験では、イモリにMDFN長調を聞かせたときに、音なしやMDFN短調を聞かせたときと比べて、イモリの総移動距離が長かった。一方で、F#単音を再生したときは、音なしやF単音を再生したときと、総移動距離に有意な差は認められなかった。以上の結果から、イモリは好きな音(F#)だけでなく、好きなメロディ(MDFN長調)を持つこと、そして好きなメロディーを聞かせたときに活発に動くことが示された。いずれの実験でもイモリの音の好みや総移動距離に性差は認められなかった。