| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-15 (Poster presentation)
クビアカツヤカミキリAromia bungiiは中国などを原産とするカミキリムシである。幼虫はサクラなどバラ科樹木に侵入して内部を食害し枯死させる。そのため日本では2018年に特定外来生物に指定された。埼玉県には2013年に侵入し、被害が県北部から南へと拡大している。調査は行われているが調査地点に偏りがあり、被害がどこまで進行しているか明確ではない。また、1年間の被害拡大距離が分からず拡大しそうな地域への防除が困難である。そのため現在の調査は効率的な防除に繋がっていないと考え、防除につながる調査方法の検討を目的として研究を行った。具体的には、一般的に調査を行う6~8月以外の時期でも調査が可能か検討することと、拡大距離の調査を行った。被害調査は、樹木を観察し「成虫」「成虫脱出孔」「フラス」「フラス排出孔」のうち1つでも確認した場合、被害有りと判断した。調査時期については、2021年7月と2022年3月・5月に行田市のサクラ103本を対象に調査を行い、7月と3月・5月の結果を比較した。拡大距離については、地図上で昨年度の埼玉県における被害拡大の南端から南北に約12kmの範囲の計9地点を設定し、2021年から2022年の拡大距離を調査した。
調査の結果、調査時期においては、フラスは継続して見られた割合が高かったため、フラスを対象とすれば6~8月以外の時期でも調査が可能と考えた。拡大距離においては、前提とした最前線の位置が違うという結果になったため、1年間の拡大距離がわからなかった。調査地点を検討し、同じ地域で拡大距離の調査を再度行うことで1年間の拡大距離がわかると考えている。6~8月以外の時期でもフラスを対象に調査すれば、データを多く集められ正確な最前線がわかる。更に拡大距離が分かれば防除すべき地域が分かり集中的に防除を行える。このように工夫をすれば、効率的な防除を行うことができる。