| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-16 (Poster presentation)
本研究ではセンペルビウム(Sempervium)の糸に着目し、その機能性を明らかにしていく。
セルペルビウムとはベンケイソウ科のセンペルビウム属のことを指す。この植物に着目した理由は、葉の先端から生えている糸が特徴的で先行研究もほとんどなく、新しい発見の機会だと思ったからだ。糸は葉の先端から他の葉の先端にかけて複数本生えている。
糸の性質を調べる上での実験は2つある。1つ目は糸が個体の成長にどのように関わるのかを調べるため、糸を全て外した個体の成長の過程を観察する実験である。センペルビウム1個体に生えている糸を植物の上から下までピンセットで取り除き、2022年10月14日から2023年1月18日までの97日間、変化を観察した。最長となる方を横とし、これをもとにした縦の幅を1週間に1度測定した。2つ目は糸が道管の役割をもっているかどうかを調べるため、食紅を溶かした溶液で水耕栽培をした。500mlの水に対して0.3gの赤い食紅を入れて色水を調整し、その色水にセンペルビウムの根を浸した。観察期間は2022年11月30日から2023年1月27日までの59日間である。実験はどちらも日当たりの良い室内で育てた。
1つ目の実験結果は、糸をすべて取ると大きさが変化した。通常の個体は縦は10%、横は13%萎縮したのに対し、糸を全て取った個体は縦は約40%、横は約52%萎縮した。この結果から、糸はセンペルビウムの成長過程において重要な役割であることがわかった。2つ目の結果は、顕微鏡で観察すると糸は染色していて、本体は葉の基部と、茎に相当する部分が赤く染まっていた。この実験からは、糸に水分を通す性質を持っていることが分かった。
本研究では、機能性を明らかにする上で行った糸の性質を調べる実験までしかできなかった。今後は調べた性質をもとに、糸が植物の繁殖や防御に関係するのか調べていきたい。