| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-20 (Poster presentation)
鳥類は多くの種類の羽毛を持つ。鳥の半綿羽は保温性が高く、風切羽は撥水性が大きいことが分かっているが、ペットとして一般的なインコ類においてはあまり知見が得られていないため、2種類の羽の撥水性の違いとその要因を明らかにすることを目的として実験を行った。
一般に、鳥類は尾脂腺から分泌される疎水性の油分を羽毛に塗り広げており、これが撥水性の一因となっている。この油分をエタノールによりよく拭き取ったセキセイインコの羽(風切羽と半綿羽)と、油分が残った状態の羽の両方に水滴を垂らしたところ、どれも目視では接触角が90°よりも大きく、撥水性が保たれていることが確認できた。この実験から、鳥の羽の表面に付着した油分以外に、撥水性を生み出す別の要因があると考えられた。
ここで、油分が失われた羽に着目して撥水性を測定するために以下の実験を行なった。
初めの実験で用いた、油分が失われた風切羽と半綿羽を同じ面積に揃え、それぞれビーカー内の水に浸して羽を引き上げた際の水の質量の変化量を測定し、水の吸収力の小ささを撥水性の大きさとした。この実験から、半綿羽よりも風切羽のほうが水の吸収量が小さかったため、撥水性が大きいと考えられる。
そこで、羽の構造を要因とする撥水性について検討するために、様々な体長のインコ(ルリコンゴウインコ、アカコンゴウインコ、ワキコガネウロコインコ、セキセイインコ)の風切羽と半綿羽の構造を光学顕微鏡で観察した。すると、種が異なっていても、風切羽の小羽枝の間隔は約20μmで多くの場合並行になっているのに対し、半綿羽は小羽枝の向きが一定ではなく、様々な方向を向いていることが分かった。
この2つの実験を通して、風切羽は半綿羽に対して羽先のまとまりがあり撥水性にはより優れていると言うことがいえるだろう。
今後は羽の撥水性と保温性の関連性を研究しようと思う。