| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-21 (Poster presentation)
ラットが今まで食べたことのない食べ物を選択して口にする場合、周囲からの影響を受けるのだろうか。先行研究ではラットは他の個体の息に含まれる成分(二硫化炭素)とともに食物の匂いを嗅ぐとその匂いのする食べ物を優先的に選択することがわかっている。しかし元々ラットが好む傾向のある食べ物よりも他個体から出る匂いとして認識した食べ物の方をより優先して選択することがあるのかどうか、また複数個体から受ける影響の大きさなどに関しては明らかになっていない。
そこで今回は以上の二点を明らかにするために部活動として飼育しているラットを用いて実験を行った。実験は先行研究を参考に以下の工程で行った。まず空腹状態のラットAを2種類の食物(枝豆の粉末を振りかけたペレットと煮干しの粉末を振りかけたペレット)が設置されたケースに移し、どちらのペレットを食べるのかを観察する。その後3日間、ラットAには選択しなかった方のペレットを餌として与え続ける。3日後、そのラットAを空腹状態である他の個体(ラットB)のいるケースに移し、20分程度交流させる。交流後のラットBをラットAと同様の2種類の食物が設置されたケースに移した時、選んだ食物がラットAと同じであるかそうでないかを記録する。またラットAを複数のラットに増やした場合についても実験を行った。
実験結果からはラットBが高確率でラットAと違う食物(ラットAが匂いを伝達した食物)を選ぶことがわかった。ここから、ラットが元々好む傾向のある食べ物よりも他個体から出る匂いとして認識した食べ物の方を優先するという傾向が示唆された。今回の方法では、ラットBが元々どちらの餌を好むかということについて事前に実験できないため、今後多くの個体を使って傾向を検証していく予定である。