| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-23 (Poster presentation)
「昔はクマゼミが少なかったのに、今ではクマゼミが多い」という話を聞いて本当なのか確かめるために、2016年からセミの抜け殻調査を始めた。調査していく中で、抜け殻が多い樹木やその環境の違いに気付き、今年は土壌含水量と羽化の関係に注目して調べた。岡山県倉敷市内の環境が異なる5地点で、7月末に抜け殻をすべて採取し、種類や性別を識別した。気象条件や過去のデータと比較する。5地点のうち1地点では、毎日、樹木ごとに抜け殻数を調べ、土壌含水量を計測した。
2022年は各調査地点すべて、抜け殻数が減少した。定点観測地で多くの抜け殻が見付かった樹木はフジ、アラカシ、タイサンボクで、平均土壌含水量45%以上ある場所から多く羽化していた。クマゼミは、メスの方がオスよりも数日早く羽化する傾向が見られた。今年と同様の気候条件だった2017年でも、抜け殻数が減少したため、7月末までの羽化条件に6月中の寒暖差が影響していることが示唆された。同じ種類の樹木であっても、土壌含水量が高い場所で抜け殻が多く見つかったため、土壌の水分量も羽化には重要であると考えられる。
単純に気温が高くなれば羽化し始めるわけではなく、寒暖差、土壌含水量が羽化に影響することがわかったため、セミの幼虫が地中でどのように気温差や水分量を感じ取っているのか、今後も継続して調べていきたい。