| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-28  (Poster presentation)

イノシシとニホンカモシカはどこで交通事故に遭うのか?
Where do wild boars and Japanese serows get into traffic accidents?

*山川美咲, 窪園悠花, 渋谷美澪(浜松学芸高等学校)
*MIsaki YAMAKAWA, Yuka KUBOZONO, Mirei SHIBUYA(Hamamatsu Gakugei High School)

本研究では、静岡県浜松市と磐田市におけるロードキルの実態解明を目的として、以下の3つの調査を行った。1つめは、身近なロードキルの実態を明らかにすることを目的として、本校の高校1、2年生に対してアンケートを実施した。342人から回答が得られ、87.7%の生徒が過去にロードキルを目撃し、57.3%の生徒が1年以内にも目撃していた。また、目撃した遺体の55.1%が哺乳類であり、そのうち57.9%がネコであった。ロードキルは多くの生徒にとって身近であり、特にネコの被害目撃件数が多かった。2つめは、生徒アンケートとの比較を目的とした浜松市役所から提供して頂いたロードキルのデータの解析である。浜松市では、ロードキルは4分類されており、ネコの交通事故死発生件数が毎月最多となっており、発情期・子育て期と重なると推定される6月、7月に増加する傾向がみられた。さらに、浜松市内各区の人口密度とネコのロードキル件数には強い正の相関がみられ(R2=0.667)、都市部でネコのロードキルが多いことが明らかになった。3つめは、磐田市役所から提供して頂いたデータの解析である。対象は、ニホンカモシカとイノシシである。まず磐田市の地図上で2×2kmの枠を60個設置し、その枠を山地、境界、台地、平野の4つに分類した。次に、各枠内でのニホンカモシカとイノシシの交通事故死発生件数を記録した。2種の野生動物のロードキルは、山地と平野の境界域で多かった。さらに、ロードキル発生現場をGoogleマップのストリートビュー機能を用いて分析した。ロードキルは、見晴らしのよい直線道路で周囲が草原・田畑である県道で多かった。以上の結果より、野生動物のロードキルは、生息地である山地に隣接した境界部で、直線道路において自動車の速度超過により動物の急な飛び出しに対応できないということが野生動物交通事故の主因である可能性が示唆された。


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