| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-33 (Poster presentation)
下水や都市部の河川水には細菌類が多数含まれている。例えば、本学近くの荒川では1mL中40,000以上の細菌類が検出され、その水を飲むことはとてもできない。安全な水を川から確保するには、これらの細菌類を減らすことが非常に重要だと考えられる。
ミドリムシは光合成を行う淡水性のプランクトンの一種で、水田や池などに多く生息しており、野外での大量培養の例もある。また、食作用により微生物を捕食する能力がある。そこで、ミドリムシの食作用により細菌数を減らし、より安全な水を作り出すことが出来ないかと考えた。本研究では、ミドリムシが大腸菌数を減少させることができるかを確かめ、また、どのような条件下でよく減少させられるのかを調べた。
まず、ミドリムシを安定して培養させるための培養液および培養条件を確立した。準備実験として、培養液そのものが大腸菌を殺菌してしまわないかを調べたところ、使用した培養液で大腸菌が減少することはなかった。また、ミドリムシ培養液そのものの中に菌が含まれているかどうかも調べた。その結果、ミドリムシ培養液中に菌はいるが、極めて少数であることが明らかになった。
本実験として、ミドリムシと大腸菌を6日間共培養して、大腸菌が減少するかどうかを調べた。その結果、大腸菌のみを培養した場合には大腸菌数が全く減少しないのに対し、ミドリムシと大腸菌を共培養した場合には培養2,3日目から大腸菌数が減少した。6日間の培養で大腸菌数は減少したが、0にはならなかった。そこで、培養日数を増やすことでより大腸菌を減少させられるのではないかと考え、培養期間を2倍に増やし、12日間ミドリムシと大腸菌の共培養を行なった。その結果、ミドリムシが良く増える培養液を用いた場合には徐々に大腸菌が減少し、約10日間で激減した。これらの結果から、ミドリムシは共培養によって大腸菌を減少させることが明らかになった。