| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-35 (Poster presentation)
武蔵高等学校中学校には,旧制高校時代に使用された,剥製・骨格標本・液浸標本・貝殻標本・昆虫標本など,様々な種類の博物学標本(以下,武高コレクション)が収蔵されている。しかし,教育課程の変化によりこれらは役割を終え,展示による劣化の恐れもあり,十分に活用されていないのが現状である。また,標本の保存という長期的な課題もある。本研究では,学校収蔵標本の3Dモデルの作成を試みるとともに,新しい形での標本の利活用について検討した。
まず,3Dモデルの作成方法やソフトウェアについて比較検討を行った結果,特別な機器を必要とせず精密さも実現できる,フォトグラメトリによる3Dモデルの作成が適していることが分かった。その上で,武高コレクションのうち剥製標本・骨格標本・貝殻標本・果実の液浸標本の一部を対象とし,iPhoneのカメラ機能と3d Scanner App(Laan Labs)を用いて,3Dモデルを作成した。
作成された3Dモデルにおいては,剥製では毛並みや質感が再現でき,骨格標本でも肋骨の1本1本をうまく表現することができた。また,標本を拡大したり,標本の中に入って内部から見たりする事ができた。貝殻標本では,ガラスの上に標本を置いて上下から撮影することで360度動かすことのできる標本を作成することができた。一方,液浸標本では,透明度の高い保存液を透過してしまうことにより,3Dモデルの作成が上手くできないなど,課題も見えてきた。
3Dモデルはブラウザ上で簡単に閲覧することができる。また,スマートフォンやタブレット等の携帯端末においては,AR技術を用いて3Dモデルを現実世界に重ね合わせることができる。教育現場では,生徒の端末にデータを配布することによって,各々の生徒が場所・時間を問わず,自由に観察することが可能となる。今後デジタルデータベースを構築し,授業教材としての活用を検討していきたい。