| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-40  (Poster presentation)

加古川におけるタカハヤとアブラハヤの形態及び分子生物学的研究【A】
Morphological and taxonomic study of Rhynchocypris oxycephalus jouyi and Rhynchocypris lagowskii steindachneri in Kakogawa river【A】

*大前裕太郎, 今堀皓貴, 岡田彩裕, 北村有真, 小林要理, 堀敬太, 松田琉生(白陵高等学校)
*Yutaro OMAE, Kouki IMAHORI, Ayahiro OKADA, Yuma KITAMURA, Youri KOBAYASHI, Keita HORI, rui MATSUDA(Hakuryo H.S.)

ヒメハヤ属(Phoxinus)魚類にはタカハヤ(P. oxycephalus jouyi)やアブラハヤ(P. lagowskii steindachneri)が属している.この両種には体側の模様,目の大きさ,側線上方鱗数や尾鰭の切れ込みの深さなどの違い等の見分け方が存在するが,形態の変異が起きやすく同定が困難である (藤田,2015).タカハヤは神奈川県以西部及び新潟県境川水系以西の本州,四国,九州に分布し,アブラハヤは岡山県旭川以東の本州に分布している.兵庫県では,この2魚種の分布が重複している(羽多ほか,2018).また分布域の重複が見られる場所では,自然交雑が示唆されている(樋口・渡辺,2005).本校生物部は,兵庫県下を流れる加古川上流部(兵庫県丹波市青垣町)における定期的な生態調査にて、タカハヤとアブラハヤの両種が閉鎖的な環境に,同所的に生息していることを認めていた。
そこで本研究では, タカハヤ・アブラハヤの形態観察及び分子系統解析を行い,両種の加古川上流部における交雑の有無を調べた. 研究には加古川上流部,また比較のために多摩川(東京都),沼田川(広島県)から採集した個体を用いた.
形態観察により,加古川上流部にて採集した個体を「タカハヤの形質を持つ」,「アブラハヤの形質を持つ」,「中間的な性質を持つ」の3つに分類した.それぞれから1個体ずつ,そして多摩川の個体と沼田川の個体を一個体ずつ,合計5個体を選び,ML法にて系統樹を作成した.その結果,多摩川から採集した個体はアブラハヤと姉妹群を形成し,沼田川から採集した個体および加古川上流部から採集したすべての個体はタカハヤと姉妹群を形成した.アブラハヤの形質を持つ個体であってもタカハヤのクラスタに含まれたことから,二種間の交雑が起こっている可能性があると考えられる.しかし,単なる形質転換の可能性もあり,解析を行った個体数も少ないため,今後も採集を続けていき,交雑が起こっているかを解明していく必要がある.


日本生態学会