| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-45 (Poster presentation)
生物由来の有機物を炭化して作られる土壌改良資材であるバイオチャーは、散布することで土壌のpHや保水性、微生物活性を改善し、植物の生産性を増加させることが期待されている。しかし根菜を対象としたバイオチャーの適切な散布量をまとめた研究は少ない。そこで本研究ではバイオチャーの散布量の違いによるダイコンの成長への影響を明らかにすることを目的とした。
10月に直径12cm高さ28cmのワグネルポットへ化成肥料0.45gを添加した黒土を12Lを充填し、そしてバイオチャーを0、5、10、15、20、25t/ha(C0、C5、C10、C15、C20、C25)ずつ混ぜ込んだ後、ダイコンを播種し、野外に設置した。発芽後、茎の高さと太さ、全長(地面から葉の先までの長さ)、葉緑素、地温、土壌含水率を週3回、土壌のpH、電気伝導度(EC)、土壌透過水の量とそこに含まれるアンモニア量、硝酸量を月に1回測定した。収穫時に葉面積、葉の重さ、可食部の重さ、体積、糖度を測定した。
バイオチャーを散布することで発芽率は上昇し、C5が最大であったが、C20とC25ではC0以下の値を示した。C5のECが低かったことから、発芽率の増加はECの低下によると考えられる。ダイコンの可食部の重さ、太さ、体積は散布区で増加しC15で最も大きくなったが、C25はC0より小さくなった。全長、高さにおいても成長初期から同じ傾向がみられた。土壌環境は散布により成長初期の土壌含水率の増加と地温の低下がみられた。また、ECは12月に散布区で大きくなり、アンモニア態窒素は10月、硝酸態窒素は11月に大きくなった。このことから、ダイコンの成長の促進は土壌含水率と土壌中の栄養塩の増加に起因する可能性が示唆された。以上より、ダイコンの成長におけるバイオチャー散布の適正量は15t/haであり、25t/ha以上の散布は負の影響がでることが明らかとなった。