| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-48 (Poster presentation)
フクロモモンガは偏食傾向があり、このことが原因となって栄養性疾患になりやすい。特に飼育下にある個体は嗜好性に差が出やすく、栄養性疾患になりやすいと考えられている。しかしながら、フクロモモンガはエキゾチック動物であり、疾患に関する適切な予防法に関する知見が少ない。本研究では、フクロモモンガが好む食物を用いて嫌いな食物でも摂食意欲を助長させる化学物質を同定することを目的とした。 飼育下にあるフクロモモンガに複数の野菜や果物を与えたところ、小松菜を与えた際には摂食意欲が見られなかった一方で、リンゴを与えた際に顕著な摂食意欲が見られた。そこで、実験個体がリンゴに対して高い摂食意欲を見せたのは香気成分に反応したためだと仮説を立てて実験を行った。リンゴまたは小松菜の搾汁をガーゼに浸してフクロモモンガに与えた結果、リンゴの搾汁を浸した場合でのみガーゼを舐める反応が見られた。また、小松菜にリンゴ搾汁を塗った場合、水を塗った場合に比べて強い摂食意欲が見られた。これらの結果から、フクロモモンガはリンゴの香気成分に強く反応することが示唆された。リンゴの香気成分として酢酸ヘキシル、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、エチルアセテートなどが知られている。今後、これらの化学物質に対するフクロモモンガの反応性の解析を進めることで、フクロモモンガの偏食を改善し栄養性疾患発症の予防に有用な知見を提供できると期待される。