| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-49 (Poster presentation)
Axinidae科単生類は扁形動物門単生綱に属し、海産魚の鰓に寄生する外部寄生虫で、日本では4属7種の報告がある。多くはダツ目魚類を宿主とするため、本科単生類はダツ目魚類に特異的に寄生する可能性が考えられる。本研究では、本科単生類の報告があるアヤトビウオ、ハマダツに加えて、サヨリ、ホソアオトビ、ホソトビウオの5種のダツ目魚類の鰓に寄生していた単生類の分類学的検討を行った。魚は、2013年8月から2022年8月にかけて瀬戸内海、高知県で釣りや市場での購入により採集し、解剖して単生類を摘出した。単生類は、染色標本の作製による形態観察及び分子系統解析を行った。協力者から提供された標本も解析に利用した。形態観察の結果、採集した全ての単生類で、背側に開く膣孔やU字またはJ字型の卵巣、後部吸着盤の2本の鉤などの本科の形質を確認できた。本科の属の分類形質として主に用いられる、生殖孔や陰茎、膣の棘の有無や形状を観察した結果、アヤトビウオ、ホソトビウオの単生類はAxine属、ホソアオトビの単生類はAxininae亜科、ハマダツの単生類はAxinoidinae亜科の特徴と一致した。サヨリの単生類の、棘に囲まれた生殖孔や棘のない陰茎などの形質と一致する特徴を持つ本科の属はなかった。28S rRNA領域の系統解析の結果、サヨリの単生類はMicrocotylinea亜目のクラスタ内で、本科単生類と同じグループを形成した。この結果は、Boeger&Kritskyによる形態学的な系統解析結果と一致したため、サヨリの単生類はAxinidae科に属する未記載属であると考えられる。今回得られた単生類は全てAxinidae科だったが、検査個体が5魚種のみであり、本科単生類がダツ目魚類に特異的に寄生するかは不確かである。また、本科単生類のDNA情報の蓄積が不十分なため、今後DNA解析を含めた分類研究が必要である。