| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-50  (Poster presentation)

GPSを使ったカラスバトの生態解明への挑戦【A】
The challenge of eclucidating the ecology of Japanese wood pigeons【A】

*勝見美海, 大野彩乃, 石井綾乃(都立国分寺高等学校)
*Mika KATSUMI, Ayano OHONO, Ayano ISHII(Kokubunji Highschool)

カラスバトは伊豆諸島などの島嶼部を中心に生息している鳥で、個体数が少ないことや人前にめったに姿を現さないことからその生態には未解明な点が多い。
貴重な鳥だが、生態がわかっていないため、今後開発などの影響でいなくなってしまう可能性がある。
国分寺高校では10年ほど前からカラスバトの調査を行っている。調査の結果、カラスバトは照葉樹の暗い森のシンボル的存在であることがわかった。
今回、更なる生態解明のために私たちはカラスバトの島間の移動に着目して研究を行った。カラスバトの島間移動については八丈島と八丈小島で確認されていたが、伊豆諸島では確認されていなかった。
そこで、私たちは国立環境研究所の安藤温子博士と共同で伊豆諸島におけるカラスバトの島間移動の有無をGPSを使って解明しようと試みた。
研究には、怪我などで野外から保護されて大島公園で飼育されていた4個体を使用し、カラスバトの体に背負わせる形で発信機を取り付けた。4個体の内2個体を私たちは研究対象とし、5月に伊豆大島で4個体を放鳥した。取り付けた発信機は太陽光パネルによって得られる電力を使い、位置情報を送る仕組みになっている。
5月1日に放鳥した個体のデータを収集した結果、2022年の7月1日〜3日の間にオスの一個体が新島を経由して三宅島に渡ったこととその個体が8月22日〜23日にかけて大島に戻ってきたことがわかった。
さらに、私たちはGPSから得られる活動係数を用いてカラスバトの1日の行動パターンを調べた。現時点でデータを分析した範囲では、11時から19時までの時間帯は日常的にあまり動かない傾向があることがわかった。他の時間帯における活動係数のばらつきは、天気や繁殖活動の影響によるものではないかと考察している。
今後は、1年を通してのデータを収集して季節ごとの活動パターンを調べるなど、研究を続けていきたい。


日本生態学会