| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-54  (Poster presentation)

ヒキガエルの色彩パターンを用いた生態調査【A】
Ecological survey of toads using ventral color patterns【A】

*城陽太, 錦織智崇, 細井托人, 横山翔, 高久曜充, 中嶋晟, 五辻元(東京都立科学技術高校)
*Haruta JO, Chishu NISHIGORI, Takuto HOSOI, Sho YOKOYAMA, Hikaru TAKAHISA, Jo NAKAJIMA, Yuan ITSUTSUJI(Tokyo Science Technology H.S.)

 両生類は、生育に水辺環境が必須であるが、近年の開発に伴い全国的に多くの種が絶滅の危機に晒されている。その中で、本校(東京都江東区)の近くに位置する猿江恩賜公園は小規模の都市公園で、かつ外来種も多く、良好とは言い難い環境にもかかわらず絶滅危惧種のヒキガエルが非常に多く見られることに気付いた。そこで私達は、「個体識別調査」を行うことで、公園内のヒキガエルの生態を解明しようと考えた。従来の個体識別には「指切り法」があるが、個体への影響や倫理的な問題が報告されている。そこで本研究では、ヒキガエルの腹部の特徴的な「色彩パターン」を照合することで個体識別を行った。
 調査は、日没後に公園内を回り、ヒキガエルの腹部と鼓膜の撮影、位置の記録を行った。当初、公園内のヒキガエルは150匹前後ではないかと予想していたが、腹部の画像を照合した結果、少なくとも283匹のヒキガエルが生息していることが明らかになった。また、非繁殖期は移動性が低いことも確認できた。
 また、亜種の推定も行った。本州の平地には、主に東日本にアズマヒキガエル、西日本にニホンヒキガエルが分布している。分布域から考えて、この公園にはアズマヒキガエルが生息していると予想していたが、鼓膜径を調べた結果、在来のアズマヒキガエルよりも移入種のニホンヒキガエル及び両種の交雑種と考えられる個体が多く生息していることを示唆する結果が得られた。このことは、公園内の生物多様性が失われつつあることを意味している。
 さらに、色彩パターンの照合を迅速に行うために、本校の情報分野と共同研究を行った。具体的には、AIの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて腹部画像の機械学習による個体の識別を行った。検証した結果、学習済み個体の識別率は0.94~1.00ととても高い識別率を出した。CNNでは学習済みか未学習かの判別がつかないため、類似個体ごとに仕分け、照合の効率化を図った。


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