| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-58 (Poster presentation)
中国地方と九州地方のニホンリスは、絶滅のおそれのある地域個体群(環境省2020)に指定されており、減少傾向にある。岡山県では絶滅危惧Ⅰ類に分類され、生息確認が県南東部は多いが、県西部は非常に少ないため、私たちは県西部に位置する高梁市で生息実態を解明することにした。市内にある自然保護区の森を調査地として、2022年4月からフィールドサイン法を用いて、食痕である松ぼっくりのエビフライを探した。
最初の調査は述べ22人で行い、食痕を2地点で合計146個見つけることができた。その後、翌2月まで計6回の調査を行った結果、10月以降は食痕の数が減少した。7月以降は3地点目となる新たな餌場を見つけ、翌2月には更にもう1箇所、合計4地点で食痕を採取した。採取した食痕の中軸の長さを測定したところ、最小18mm、最大60mm(n=389)で、その内25~30mmが27.2%、30~35mmが25.4%、35~40mmが23.4%と、25~40mmの占める割合が多かった。次に、食べられていない松ぼっくりを調査地で無造作に拾い、中軸の長さを測定したところ、最小19mm、最大55mm(n=450)で、その内25~30mmが8.9%しかなく、30~35mmが28.0%、35~40mmが33.3%と、30~40mmの占める割合が多かった。このことから、本種は少し小さめである25~30mmの松ぼっくりを選択的に選んでいることが示唆された。今後、新しい食痕と近くに落ちている食べられていない松ぼっくりの大きさを比較して、本当に選択的に選んでいるか確かめていきたい。その他、センサーカメラを設置したところ、3地点で9枚撮影でき、すべて午前中だった。本種は午前中に活動し、午後は休息していると考えられる。