| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-59 (Poster presentation)
関西におけるアカハライモリの警戒色の多様性
アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)は日本全土に生息している有毒の両生類であり、有毒であることを知らせる警戒色を腹部に持っている。腹の模様と繁殖行動で6つの地域種族に分けられる(Sawada 1963a)また、アカハライモリは腹を天敵に見せつける警戒行動を取る。警戒色の模様は個体群内では類似点があるが、個体群間では差がある場合がある。警戒色の模様が変化する要因に疑問を抱いた。また、警戒行動と警戒色との関係に疑問を抱いた。
近畿北部の地域種族2地点・近畿南部の地域種族4地点で採集を行い、警戒色の赤色面積の比率、斑点と赤い部分の境界線の長さの箱ひげ図を作成して個体群ごとの警戒色の特徴の差を検証した。
アカハライモリを持ち上げると、複数回反り返る警戒行動をとる。よって、アカハライモリをつまみ上げて10秒間に警戒行動をとる回数を計測し、赤色面積の比率と警戒行動でロジスティック回帰モデルを作って関係性を調査した。
近畿南部は赤い面積が小さいほど複雑になる傾向にあったが、近畿北部の赤い面積が極端に小さく、模様が単調になる傾向があった。
同種族の中において、遠距離の個体群間では警戒色の模様で差が見られない場合があり、近距離の個体群間で差が見られる場合があった。
一方、近い標高に生息する個体群間では警戒色の特徴が似ていた。
警戒行動と赤色面積との関係を見ると、個体群内では赤色面積が小さい個体が警戒行動を起こす傾向にあった。
地域種族が異なると、警戒色の模様が極端に異なることが分かった。同種族間では、警戒色の変化の要因は個体群間の距離ではなく、標高差に関わっていると考えられる。
赤色面積の大きい個体は警戒色が見えやすく、警戒行動をとる必要はない。しかし、赤色面積の小さい個体は天敵から警戒色が目立ちにくいため警戒行動を起こす必要があったと考えられる。