| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-63 (Poster presentation)
これまで,私たちは大垣市内に生息する渓流性サンショウウオであるマホロバサンショウウオの生活史を中心に研究を行ってきた。さらに,岐阜県全域の分布や生息環境について詳しく知りたいと考え,分布調査とQGIS及びMaxEntを用いた種分布モデルによる解析を行った。
マホロバサンショウウオと比較対象としてヒダサンショウウオの2種の渓流性サンショウウオを研究に用いた。生息確認地点の緯度経度情報は,学校近隣では,できる限り私たちで現地調査を行い,広域には顧問の先生の力を借りて収集した。QGISを用いて,生息地点と降水・積雪・気温・傾斜・標高・森林面積の6つの環境データをそれぞれ重ね合わせ,関係性を考察した。また,MaxEntを用いて生息適地モデルを作成した。
解析の結果,マホロバサンショウウオの生息条件には,標高が大きく関係し,生息地が限られていた。ヒダサンショウウオの生息条件には,傾斜が大きく関係していた。マホロバサンショウウオは伏流水中で繁殖するため,伏流水が豊富に流れ出る標高が限られていること,ヒダサンショウウオはある程度水量が豊富な急流で繁殖するため,急流ができやすい傾斜が繁殖場所としての必須条件であることとそれぞれ深く関係していると考えた。また,ヒダサンショウウオの生息適地がより北側であり,このことはヒダサンショウウオの生息地点の方がマホロバサンショウウオの生息地点よりも,気温が低く積雪が多いことと合わせて,ヒダサンショウウオの方がより寒冷な環境に適応し,雪解け開始時期の2月から3月に繁殖することと大きな関係があると考えた。一方,両種ともに,森林面積は生息条件にあまり関係していないという結果が出たが,今回の調査の生息確認地点はすべて繁殖が行われている渓流付近であったためで,成体の生息には良好な森林はやはり必要であると考えている。岐阜県内のマホロバサンショウウオの系統解析の結果についても発表する予定である。