| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-64 (Poster presentation)
河川には、汚水が流入し水質が悪化した状態が自然の力によって元の水質状態にまで戻る「河川の自然浄化」という現象が認められる。しかし私たちの学校付近を流れる石川(大和川水系)下流域では水が濁っていた。周辺には排水口・井堰が設置されており、井堰上流のバックウォーターでは、流れが緩やかになっていた。そのような井堰は石川の流程25kmに25か所設置されていた。
上記のことから、「河川の流れは自然浄化を促進させる。そして、この自然浄化は河川内の物質循環がバランスよくまわることによってはたらく。」という仮説を考えた。
この仮説を検証することを目的に、①野外調査と②水槽実験を行った。
①野外調査は、河川の流れが自然浄化とどのような関係にあるのか調査することを目的に行った。井堰が設置された佐備川(石川支川)と設置されていなかった石川本川で、汚水の流入状況、流速やCODなどを調査した。
②水槽実験は、河川を模した環境を水槽内に再現して行った。流れと消費者(チリメンカワニナ)の有無を組み合わせ4つの条件を設定し、流速、CODや無機塩類量などを測定した。
結果、①野外調査では、井堰がない河川で顕著な自然浄化が確認され、②水槽実験では、流れがあり、消費者が生存した条件で水質の最も大きな回復が認められた。
また、流れの有無以外にも消費者の有無によっても水槽内の状態に大きな違いがあり、消費者が生息した水槽のほうが水質が回復した。
これらの結果から、河川の自然浄化には流れが必要であることが示唆された。また、消費者も自然浄化に必要であると示唆された。これらのことから、河川の流れは、自然浄化を促進するために河川内の生物が必要とする酸素を供給すると考えた。
今後は、②水槽実験で河川の流れ以上に消費者が自然浄化や物質循環に大きな影響を与えたという結果から、消費者が自然浄化にどのような影響を与えているのかに着目して研究を発展させたい。