| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S01-5  (Presentation in Symposium)

農林水産政策と生物多様性国家戦略
Agriculture, forestry and fisheries policy and the National Biodiversity Strategy and Action Plans

*橋本禅(東京大学)
*Shizuka HASHIMOTO(University of Tokyo)

 IPBESが2019年に公表した地球規模評価報告書やその翌年に生物多様性事務局が公表した地球規模生物多様性概況第5版は、地球規模でみた生物多様性の低下の直接的要因である、陸域や海域の利用の変化や直接採取(森林伐採や漁獲等)、気候変動、汚染、侵略的外来種への対応だけでなく、その背後にある生産・消費、ガバナンス、技術利用等のさまざまな間接要因への介入が不可欠であることを指摘した。農林水産業は、ここに示した生物多様性の低下の直接・間接要因と深く関わる産業であり、その政策のあり方は次期生物多様性国家戦略の実現に大きな影響を与える。わが国の農林水産政策は、1990年代末から2000年初頭にかけての各種基本法の改正や制定を通じて、農林水産業の「多面的機能」の概念を基本法に位置づけ、従来の産業政策にとどまらず地域・国土政策的な側面を持つ政策への転換が志向された。本発表では、農林水産省が政策のグリーン化の方針を示した「農林水産省環境政策の基本方針」(2020)や、アジアモンスーン地域の持続的な食料システムのモデルとして打ち出された「みどりの食料システム戦略」(2021)、農林水産省生物多様性戦略(2023公表予定)をひも解く作業を通じて、生物多様性国家戦略の実現において農林水産政策が担う役割や抱えている課題について検討する。


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