| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
シンポジウム S01-6 (Presentation in Symposium)
次期生物多様性国家戦略における目指すべき自然共生社会像の1つとして、「多様で健全な生態系から生み出される自然の恵みや、自然との関わりの中で様々な恵みを引き出す知識や技術などの文化・暮らしが次の世代に受け継がれ、地域コミュニティが活性化している社会」が掲げられている。そして、基本戦略2の「自然を活用した社会課題」の解決において、「地域の伝統文化の存続に配慮しつつ自然を活かした地域づくり」が行動目標に組み込まれるなど、生物多様性と暮らしや文化との関わりの重要性がより深く認識されるようになった。生物多様性の枠組みにおいて、伝統文化や自然観、地域の自然の恵みを活かし、災いを避ける知恵や技術などを収集・共有し、継承するための施策の展開が期待される。
日本の里山・里海などの二次的な自然を中心としたランドスケープは、地域ごとの集落、農地、水辺、森林など多様な景観構成要素があり、生物文化多様性の保全という観点から重要である。こうしたランドスケープは、自然がもたらす多様な地域文化と生物多様性の相互関係に基づきながら形成され、それぞれの景観構成要素と人の活動、生物とが密接に関わってきた。一方、各地のランドスケープでは、社会経済の変化などによって土地利用や管理形態が大きく変化してきた。人口減少が進むとともに、自然資源の持続的な利用の機会は大きく減少し、生物多様性の保全の側面から多くの課題を抱えている。今後、里山・里海などの自然や文化に即した伝統知・地域知を顕在化し、普遍性と固有性を見極めながら課題解決につなげていく必要がある。本報告では、三陸海岸や琵琶湖西岸での事例に基づきながら、里山・里海ライフスタイルの特徴や意義を整理し、次期生物多様性国家戦略に基づく取り組みのあり方について考察する。