| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S07-7  (Presentation in Symposium)

DNAベースの遺伝的多様性モニタリングのための評価指標と解析手法の現状と将来
Current conditions and future issues of both assessment indicators and analytical methods for DNA-based genetic diversity monitoring

*中臺亮介(国立環境研究所)
*Ryosuke NAKADAI(NIES)

昆明−モントリオール生物多様性枠組みが採択され、遺伝的多様性に関連した目標と具体的なターゲット指標が初めて明記された。この事実は大きな進展である一方で、個体数や分布情報から推定される遺伝的多様性の評価方法、つまり、遺伝情報(DNA情報)に基づかない評価方法のみがターゲット指標として記載されており、課題を残す結果となっている。具体的には、候補として挙がっていた「遺伝的多様性に関するDNAベースのモニタリングが実施されている種・集団の数」というターゲット指標は残念ながら最終的な生物多様性枠組みには含まれなかった。学術研究の中では、シーケンス技術の発展に伴い、遺伝情報が簡便に取得できるようになりつつあるが、高頻度、多種、そして、全世界スケールでの広域モニタリングを実施するためには、未だ大きな障壁が存在している。本発表では、始めに現状での遺伝的多様性に関連した指標と遺伝的多様性の評価に用いられる分子生物学手法をレビューする。その後、DNAベースの遺伝的多様性のモニタリングの実現を目指すという視点から、現在の評価指標や分子生物学手法の特徴と課題、そして、今後の技術開発の方向性についての発表者の展望を紹介する。本発表を通して、基礎研究としての技術的な最先端に加えて、遺伝的多様性のモニタリングという応用的な視点で必要となる技術の最適化について、議論したい。


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