| 要旨トップ | ESJ70 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S07  3月20日 9:00-12:00 Room B

次世代の遺伝的多様性の評価・モニタリングの展開と課題ー次期生物多様性枠組に向けて
Development and challenges in assessment and monitoring of genetic diversity toward the post 2020 Global Biodiversity Framework

石濱史子(国立環境研究所), 竹内やよい(国立環境研究所), 深谷肇一(国立環境研究所)
Fumiko ISHIHAMA(NIES), Yahoi TAKEUCHI(NIES), Keiichi FUKAYA(NIES)

生物多様性条約の次期目標であるポスト2020生物多様性枠組においては、普通種を含めた全ての野生種の遺伝的多様性の保全が目標となる見通しである。これまでの愛知目標では、遺伝的多様性の保全対象が飼育・栽培種とその近縁種に限られていたのに対し、野生種全体への対象拡大は大きな変化で、挑戦的でもある。日本の生物多様性国家戦略でも、ポスト2020枠組に沿った目標・評価項目が設定されていくが、どのように遺伝的多様性の評価・モニタリングを行うかは大きな課題である。従前から希少種を中心とした取り組みはあったものの、今後、普通種でも気候変動影響による分布縮小や新たな気候条件への適応の必要性等が想定される中で、希少種に限らない遺伝的多様性の評価指標とモニタリングが必要とされている。
現況、条約の議論では、Hoban et al. 2020によって提案された、有効集団サイズや分化した集団の残存状況に関する指標がポスト2020枠組の指標の有力候補となっているが、これらは、センサスサイズ(見た目の個体数)や個体群の空間分布情報を代替として用いて算出することが想定されている。このような代替法は、遺伝解析の労力やコスト等を考慮した手法ではあるが、個体数推定や分布把握も必ずしも容易ではない。その一方で、遺伝解析のコストは年々低下しており、また、ゲノム情報を活用した遺伝的多様性の評価手法も日進月歩である。
ポスト2020枠組に沿った遺伝的多様性モニタリングの実施には、まずは現状でどのようなデータソースや手法が活用可能か、また、近い将来に遺伝解析に基づく評価を行う可能性を想定し、どのような具体的手法が考えられるかを検討する必要がある。本シンポジウムでは、個体数推定や幅広い遺伝解析手法を概観し、今後の国内での遺伝的多様性の評価・モニタリングに向けての課題と展開の方向性について議論する。 
コメンテータ:細矢剛(科博)、陶山佳久(東北大)

[S07-1]
企画趣旨:全ての種の遺伝的多様性の保全に向けて *石濱史子(国立環境研究所)
Background of the symposium "Toward the genetic diversity conservation of ALL species" *Fumiko ISHIHAMA(NIES)

[S07-2]
次期生物多様性国家戦略の概要と遺伝的多様性の位置づけ *福井俊介(環境省自然環境局)
Outline of the renewed National Biodiversity Strategy and Action Plans and the position of genetic diversity *Shunsuke FUKUI(Ministry of the Environment)

[S07-3]
遺伝的多様性指標の観点から見た種分布・種個体数評価の現状と課題 *深谷肇一(国立環境研究所)
Assessment of species population for the genetic diversity indicators: challenges and prospects *Keiichi FUKAYA(NIES)

[S07-4]
普通種ブナにおける遺伝的多様性保全のための統合的研究—ゲノムから個体群動態まで *戸丸信弘(名古屋大・院・生命農), 三須直也(名古屋大・院・生命農), 鳥丸猛(三重大・院・生物資源), 内山憲太郎(森林総研), 中尾勝洋(森林総研関西支所), 竹内やよい(国立環境研究所), 遠山弘法(国立環境研究所)
An integrative study for the conservation of genetic diversity in a common species, Fagus crenata — from genome to population dynamics *Nobuhiro TOMARU(Nagoya University), Naoya MISU(Nagoya University), Takeshi TORIMARU(Mie University), Kentaro UCHIYAMA(FFPRI), Katsuhiro NAKAO(Kansai Research Center, FFPRI), Yayoi TAKEUCHI(NIES), Hironori TOYAMA(NIES)

[S07-5]
湿原植物群集における多種の遺伝的多様性・構造の比較 *石井直浩(横浜国立大学大学院)
Comparisons of genetic diversity and structure among multiple species across moorland plant communities *Naohiro ISHII(Yokohama National University)

[S07-6]
絶滅危惧動物種の保全への遺伝的多様性データの活用 *村山美穂(京都大学), 佐藤悠(国立環境研究所), 伊藤英之(京都市動物園)
Application of genetic diversity information for conservation of endangered animals *Miho MURAYAMA(Kyoto University), Yu SATO(NIES), Hideyuki ITO(Kyoto City Zoo)

[S07-7]
DNAベースの遺伝的多様性モニタリングのための評価指標と解析手法の現状と将来 *中臺亮介(国立環境研究所)
Current conditions and future issues of both assessment indicators and analytical methods for DNA-based genetic diversity monitoring *Ryosuke NAKADAI(NIES)

[S07-8]
遺伝情報から近年の有効集団サイズを推定する方法およびその代替指標 *秋田鉄也(水産研究・教育機構)
Genetic methods for estimating contemporary effective size and its alternatives *Tetsuya AKITA(FRA)


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