| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S08-3  (Presentation in Symposium)

森林土壌微生物群集の地域スケールでの多機能性と環境応答性
Multifunctionality and its environmental response of forest soil microbial communities at the regional scale

*中村誠宏(北海道大学), 日浦勉(東京大学), 柴田英昭(北海道大学), 菅原悠斗(北海道大学), 舘野隆之輔(京都大学), 三木健(龍谷大学)
*Masahiro NAKAMURA(Hokkaido Univ.), Tsutomu HIURA(Tokyo Univ.), Hideaki SHIBATA(Hokkaido Univ.), Yuto SUGAWARA(Hokkaido Univ.), Ryunosuke TATENO(Kyoto Univ.), Takeshi MIKI(Ryukoku Univ.)

 日本は気候変動や人間活動が生物多様性や生態系機能に与える影響がもっとも危惧されている地域の一つである。気候変動は、温暖化だけでなく集中豪雨など極端気象現象の頻度と規模を増大させている。一方、日本の森林は、約4割がスギ・ヒノキの人工林(人間活動)が占めており、地上部の樹種の多様性が極めて低いため、地下部に供給されるリターの化学的・物理的多様性が低下し、土壌微生物群集の多様性が低下する可能性がある。そのため、人工林化は気候変動に対する森林生態系の感受性をより敏感なものにしているかもしれない。
 森林生態系の有機物分解(機能)において、土壌微生物群集は重要な役割を果たしている。土壌微生物は世代時間が短いため、多様性と機能の関係を見るのに最適な群集である。機能や環境応答の一般性を評価するには、より広域で調査する必要がある。ある局所の土壌微生物群集の温暖化などの環境変動に対する応答は研究されているが、応答が生態系により異なることがある。土壌微生物の群集構造は緯度に沿って変化する生物的・非生物的要因により大きな影響を受けるため、この緯度による群集構造の違いが応答に影響を与えている可能性がある。
 広域スケールでの生態系変化を評価するためには、日本各地に散らばる複数の森林観測サイトをネットワーク化して、共通した調査手法を多地点で行うことが有効である。そこで、本研究では天然林と人工林の土壌微生物群集を対象に以下の問いを設定して、ネットワーク研究とメソコズム実験を実施した。1)天然林と人工林の土壌微生物群集の多機能性に広域パターンはあるのか?2)土壌微生物群集は温暖化と降水量変化(気候変動)に対する環境応答に広域パターンはあるのか?3)これら機能や環境応答は人工林化(人間活動)によりどのような影響を受けるのか?


日本生態学会