| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
シンポジウム S09-4 (Presentation in Symposium)
太陽光には我々人間が感知できる青色光(400~500nm)、緑色光(500~600nm)、赤色光(600~700nm)(3色が合わさると白色光として脳に認識される)が多く含まれるほか、より短波長である紫外線とより長波長である赤外線が相当量含まれている。植物が受光する光の質(色)は、太陽光が植物に届くまでの間に、地球の大気や周りの植物による波長依存的な吸光による影響を受ける。例えば、植物群落内では上層の植物の葉により紫外線、青色光、赤色光が強く吸収されるため、群落下部では全体的に光強度が低下する以外にも、相対的に緑色光と赤外線(可視光に近い波長は遠赤光と呼ばれる; 英語ではFar-red light)の割合が増加するという光の質の変化も生じる。この光の量と質の勾配は、葉の内部でも葉緑体による光の吸収によって生じている。そのため、植物・葉緑体は光の質の変化の影響を受けているとともに、光の質の違いを感知することで周囲の環境の把握に利用している。本講演では、この光の量と質の勾配によって、植物の葉の形態、葉緑体、光合成、そして光による光合成器官の損傷である光阻害がどのように影響を受けているのかを中心に光の質と量に対する植物の応答についてお話ししたい。また、植物はクロロフィルが吸収した光エネルギーを光合成の駆動力として用いているが、そのエネルギーの一部はクロロフィル蛍光として放出されている。これを利用することで光合成活性を簡便に測定できるため、光合成研究ではクロロフィル蛍光測定法が実験室レベルからフィールド研究まで広く用いられている。しかし、葉内では葉緑体による光の吸収、および葉緑体から発せられたクロロフィル蛍光の再吸収が起きているため、クロロフィル蛍光測定法にも光の質が強く影響している。この点についても考察する。