| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W01-4  (Workshop)

日本の島嶼における植物の自殖と他殖
The reproductive biology of island plants in Japan

*渡邊謙太(沖縄工業高等専門学校), 水澤玲子(福島大学)
*Kenta WATANABE(NIT, Okinawa KOSEN), Leiko MIZUSAWA(Fukushima Univ.)

海洋に囲まれた陸地である島嶼は、生態学・進化生物学的に興味深い数多くの研究テーマを提供してきた。中でも、大陸と接続した歴史を持たない海洋島に生育する植物の繁殖様式、すなわち自殖と他殖を巡る生態や進化については、これまで多くの研究者が注目し、様々な議論がなされてきた。
大陸から離れた海洋島に植物が移入する際、一般的には一個体からでも繁殖を開始できる自殖性の植物が有利だとする考えが広く知られており(Bakerの法則)、これは理論的な予測にとどまらず、多くの島でもそのような傾向が実際に確認されてきた。一方、ハワイ諸島を始め世界の多くの海洋島の植物相においては、これとは矛盾するかのように他殖性の象徴ともいえる雌雄異株植物の割合が高いことが知られている。この一見矛盾した現象は未だに議論を呼ぶテーマである。海洋島では、自殖性と他殖を巡ってどのような選択圧が存在し、進化が繰り広げられてきたのだろうか?
日本の海洋島である伊豆諸島では、本州の近縁種との比較研究から、島への移入に伴い自殖化したと考えられる事例が複数知られている.他方、本州からより離れた海洋島である小笠原諸島では、島において雌雄異株化したと考えられる植物種が複数知られ、雌雄異株の割合も大陸と比較して高いと考えられている。しかし、これらの現象も、より詳細に見ていくと、雌雄異株化の途上にあるとされる不完全雌雄異株の存在や、自家和合性を有し、自殖を主としながらも、可能であれば他殖を優先するような植物の生態が見えてくる。こうした現象は、どのように理解したらよいだろうか。
本発表では、世界の島々における研究の蓄積を踏まえた上で、主に日本の海洋島嶼として伊豆諸島と小笠原諸島に注目し、島における自殖と他殖という現象についての考察と今後の研究の可能性を探索する。


日本生態学会