| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W02-4 (Workshop)
生物多様性−生態系機能関係において、栄養段階を超えた生物間相互作用の重要性が認識されている。主に被食−捕食関係などの栄養相互作用が着目されているが、生態系内には生態系エンジニアリングや住み場所提供といった非栄養相互作用も普遍的に存在する。生態系に対して非栄養相互作用は栄養相互作用と同程度の影響力をもつことが明らかになりつつあるため、栄養相互作用だけではなく非栄養相互作用も生態系機能に影響しているはずである。本研究では、畦畔の野生植物−訪花昆虫−作物の送粉サービスの関係性に着目し、訪花昆虫との栄養(採餌)・非栄養(夜間の休息)相互作用を介した野生植物によるソバの送粉サービスへの間接効果の解明を目的とした。ソバは自家不和合性植物であり、多種多様な昆虫による送粉がほぼ必須である。野外調査は2022年6月(夏ソバ)と9月(秋ソバ)に長野県飯島町において、ソバ開花中に畦畔草地の花資源や植生高を維持した畑(夏:12ヶ所、秋:8ヶ所)で実施した。ソバと野生植物に訪花する昆虫は日中(09:00~12:00)に、休息する昆虫は夜間(19:00~22:00)に調査した。畦畔の各野生植物種からソバへの間接効果は、栄養・非栄養相互作用のそれぞれでMüller et al. (1999)の指標を用いて算出した。その結果、栄養・非栄養的な間接効果の大きさは、季節や訪花昆虫群、野生植物種ごとに異なっていた。栄養効果は花数に正、植生高に負に応答しており、非栄養効果は逆の応答を示した。また両間接効果の比率(栄養/非栄養)は、夏ソバの訪花昆虫個体数に一山型、結実率に正の影響を与えていた。一方秋ソバでは、栄養効果のない畑も存在したため両効果の比率は訪花昆虫個体数と結実率に影響していなかったが、両効果のある畑では一山型に影響していた。以上から、畦畔の野生植物は訪花昆虫との栄養・非栄養相互作用という複数プロセスの相補性効果を介してソバの送粉サービスを維持していることが示唆された。