| 要旨トップ | ESJ70 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W02 3月19日 10:30-12:00 Room B
Tilmanらの長期野外実験に端を発する「生物多様性―生態系機能(BEF)関係」の解明は生態学の中心的テーマの1つである。様々な生態系における実験的・自然条件下での研究から、生物多様性(種・機能形質・遺伝子)に伴って生態系機能が向上・時空間的に安定化するというパターンが多く報告されてきている。この多様性と機能間の正の関係性の説明として「ニッチ分化による効率的な資源利用(相補性効果)」と「高い機能をもつ種の優占(選択効果)」が提案され、生物多様性効果の分離検証がなされてきた。生態系機能の安定化については、環境変動に対する応答の種間差(応答の多様性)などの効果が明らかになりつつある。近年では、複数栄養段階での生物間相互作用や生態系の多機能性へとBEF関係の研究対象が拡張されてきた。しかし、種・遺伝子のもつ重要な特徴の特定や自然条件下における状況依存性の理解が不足している。またBEF関係は人間社会の持続可能性を考える上でも重要である。生物多様性に支えられている生態系機能は、人間社会に必要不可欠であり、その恩恵は生態系サービスとして知られている。一方、近年の気候変動や人為的影響により生態系が劣化し、あらゆる階層での多様性が急速に失われてきている。それに伴い生態系の潜在的機能も低下し、人間社会の持続可能性も危惧されている。そのため生態系のあらゆる階層での生物多様性と生態系機能の関係性を解明し、得られた基礎生態学的知見にもとに人間社会の直面する課題を解決へと導くことが求められる。本集会では、基礎から応用まで幅広くBEF研究を進める4人の大学院生が研究を紹介し、コメンテーターとして東京大学の森章教授を迎えてBEF研究の今後の展望や応用上の課題について議論する。本集会が日本におけるBEF研究の活発化に繋がることを期待したい。
[W02-1]
遺伝的多様性ー個体群機能関係のゲノミクス
Genomics of genetic diversity-population functioning relationships
[W02-2]
群集構成と気象変動の組み合わせで決まる訪花者の応答多様性と相補性効果
The combination of community structure and environmental change determines response diversity in pollinators and its complementarity effects
[W02-3]
栄養段階を超えた生物間相互作用から生物多様性効果を評価する
Assessing biodiversity effects based on biotic interactions across trophic levels
[W02-4]
多様な野生植物による多重プロセスの相補性効果と送粉サービス:栄養・非栄養相互作用
Complementarity effects among multiple processes: diverse wild plants support pollination services via trophic and non-trophic interactions