| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W05-2 (Workshop)
大学緑地は、大学が保有し維持管理する緑地であり、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM:Other Effective area based Conservation Measures)として重要な役割を担いうる緑地の1つだといえる。昨年度の自由集会(大学緑地の再評価と新たな保全活用策の提案)では、関東に位置する大学キャンパスを対象として、大学緑地の生物多様性保全上の位置付けを整理した上で、明治期以降の周辺緑地面積の変遷過程に基づく分類を行い、グループごとの緑地の残存状況や保全、活用の概況を整理した。また、明星大学や早稲田大学を事例として、具体的な保全活用策について紹介した。今回の発表では、昨年度の分類結果を踏まえて、都市型(主に23区内.明治時代から周辺が都市化)、都市化が進む校外型2タイプ(明治時代は畑優占または水田優占)、里山が残る郊外型(明治時代は森林優占)の4タイプそれぞれについて、OECM認定により大学緑地が保全された場合に、大学が位置する地域全体の緑地ネットワークの保全に対してどの程度貢献しうるかを、景観の複雑性や生息地の孤立度などを指標する変数を用いて評価した。キャンパス内の緑地は、GEOSPACE CDSをもとに抽出しGISデータ化した。大学周辺の緑地は、環境省の1/2.5万現存植生図から樹林地および草地に該当する植生を抽出した。結果、キャンパス内の緑地率は、里山が残る郊外型で最も高く都市型で最も低かった。また、大学周辺の緑地までの距離は、里山が残る郊外型で最も近く都市型で最も遠かった。大学緑地の有無による景観指数の変化を検証した結果、都市型で最もその影響が大きかった。都市型の大学緑地は面積的には小さいものの、周辺緑地が少ない分、地域の緑地ネットワークへの貢献度が特に高いと考えられる。まとまった緑地面積を保有する郊外型キャンパスだけでなく都市型キャンパスの小規模緑地についても同様にOECM認定を進めていくことが求められる。