| 要旨トップ | ESJ70 自由集会 一覧 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W07  3月19日 16:30-18:00 Room D

海洋生物ビッグデータの活用にむけて
How to facilitate utilization of marine organism big data?

佐藤克文(東京大学大気海洋研究所), 渡辺伸一((有)リトルレオナルド), 野田琢嗣(バイオロギングソリューションズ)
Katsufumi SATO(University of Tokyo), Shinichi WATANABE(Little Leonardo Corp.), Takuji NODA(Biologging Solutions Inc.)

持続可能なやり方で生態系サービスを享受し続けるために、人間社会と野生動物の軋轢を最小化したアクションプランを社会実装していかねばならない。しかし、海洋生物の分布や移動の定量的な把握、気候変動や人為的影響に対する海洋生態系応答の理解や予測、海洋保護区の適正配置や実効性評価、あるいは学童を含む国民の海洋リテラシーの向上等々、課題は山積している。一方で、これまでなされてきた調査研究による膨大なデータが既に存在するが、その多くは第三者が利活用できる形で公開されていない。例えば、海洋動物に小型の計測機器を取り付けて観察が難しい海洋における行動や生理を測定するバイオロギング手法により、数時間から最長数年間に跨がる連続記録が得られるようになった。データ解析によって得られた知見は多くの生態学論文として既に公表されている。ところが、データ取得者が意図していなかった観点から解析すれば、全く別分野の知見が得られる事例(例えばオオミズナギドリのGPS移動経路から海上風が推定できる)があるにも関わらず、多くの場合センサーデータやメタデータは公開されていないため、データの二次利用は難しい。地球温暖化のような時間スケールの長い環境変動に対し、生態系がどのように応答していくのかを調べるためには、10年を超える長期モニタリングが重要であることは生態学に関わる誰もが認めるところである。長期間におよぶ研究費取得が極めて難しい昨今、遠い将来の生態学者にバトンタッチできる形でデータを残しておくことはとても重要である。本研究集会は、文部科学省の事業「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」の元で、ビッグデータの利活用を目指してデータを収集し可視化するシステムを構築している2グループが合同で行うものである。我々が目指すことをプレゼンし、聴衆の皆さんと海洋(陸上)生物ビッグデータの活用可能性についてブレインストーミングしたい。


日本生態学会