| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W08-4 (Workshop)
樹木は、細根(直径2 mm以下の根)を通して土壌から窒素と水の大部分を吸収している。また、樹木細根の形状や組織構造は外生菌根(ECM)種とアーバスキュラー菌根(AM)種で大きく異なっており、この違いはそれぞれの養水分獲得戦略を反映していると考えられている。しかしながら、森林生態系において実際に細根の養水分吸収を直接的に測定した研究は限定的であり、菌根菌タイプによって細根の窒素・水吸収がどのように異なるか正確な理解には至っていない。本発表では、日本の人工林において、ECM種のカラマツとアカマツ、AM種のヒノキとスギの4 樹種を対象として、成木細根の窒素吸収と水吸収を直接的に測定した研究を紹介する。
窒素吸収は、細根を樹体につながったまま掘り出し、Depletion法(直接溶液吸収法)を用いて、硝酸態およびアンモニア態窒素吸収速度を求めることで評価した。また、水吸収は、細根を採取し、プレッシャーチャンバー法を用いて、水の通しやすさを示す根水透過性を求めることで評価した。結果、硝酸態吸収速度はカラマツ、アカマツよりもヒノキ、スギの方が高くなった。一方、アンモニア態吸収速度はカラマツが他の樹種よりも高くなった。根水透過性については、カラマツ、アカマツの方が、ヒノキ、スギよりも高くなった。以上より、菌根菌タイプは細根の窒素・水吸収に影響を与え、EM種はAM種と比較して、アンモニア態窒素吸収が低く、水吸収が高いことが明らかとなった。この理由について、本発表では、EM種とAM種間の菌根菌特性と細根特性の違い、両方の観点から紐解いてゆく。