| 要旨トップ | ESJ70 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W08 3月19日 18:30-20:00 Room A
近年、森林生態系において、系内で優占する菌根菌タイプ(外生菌根(ECM)とアーバスキュラー菌根(AM))の違いが炭素・窒素・リンなどの物質循環に与える影響が大きいことが相次いで報告されている。例えば、ECM菌が優占する森林では、AM菌が優占する森林に比べて、土壌中の無機態窒素が少なく炭素蓄積量が多いことが、近年Natureなどで発表され注目を集めている。
温帯湿潤地の自然植生では、ブナやマツなどの外生菌根(ECM)性樹種が優占する森林が多く見られるが、日本では全森林面積の約3割においてスギやヒノキなどAM性樹種が植林されている。そのため、森林の菌根菌タイプが物質循環へ与える影響について理解することは、日本における土壌炭素蓄積量を推定し、森林管理を考えていく上で重要な課題である。また同時に、これらの森林は、菌根菌タイプが物質循環に与える影響を比較する最適な調査地となり、近年欧米で盛んになっている本テーマの研究を大きく進める可能性を持つ。
本集会では、はじめに、日本の森林において、優占する菌根菌タイプの違いが、土壌・地上部での窒素を中心とした養分動態、および根の菌群集に与える影響についてご講演いただく。ついで、共生する菌根菌タイプが異なる樹木の菌根菌糸の生産量や窒素養分吸収の違いなど、物質循環の違いを生み出すメカニズム解明に関る内容をご紹介いただく。さらに、窒素に限らずリン循環に対して菌根菌タイプが与える影響についても、一般的にリン制限である熱帯地域を対象とした話題を提供していただく。最後に、このトピックについての最新情報と今後の展望について、参加者全員で議論を深める。
[W08-1]
日本の菌根菌タイプの異なる森林生態系における窒素循環
Nitrogen cycling in Japanese forest ecosystems with different types of mycorrhizal association
[W08-2]
林床植生の除去は森林土壌の窒素動態と樹木根の外生菌根菌組成を変化させるか?
Does the removal of understory vegetation change nitrogen dynamics of forest soil and ecto-mycorrhizal composition in woody roots?
[W08-3]
菌根菌タイプが異なる林分における菌根菌糸の生産動態
Production dynamics of mycorrhizal hyphae in forests dominated by different mycorrhizal types
[W08-4]
樹木細根の養水分吸収機能と菌根菌-成木を対象とした野外研究から分かったこと-
Tree fine root uptake of nitrogen and water with mycorrhizal associations; What we have known from the field measurement
[W08-5]
菌根菌タイプがリン循環に及ぼす影響を考える:施肥実験区でのリン吸収特性の検証
Influence of mycorrhizal types on phosphorus cycling: A testing of phosphorus acquisition strategies in fertilized plots