| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W20-1 (Workshop)
著しい形態的多様性を見せる雌雄交尾器の形の進化は,一般に性淘汰・性的対立で説明される.しかし形と機能性をつながない限り,淘汰圧の特定だけでは,近縁種間の形の分化とその維持機構を説明しきれない.演者は体長よりも長い雄交尾器をもつハムシについて,交尾中の雌雄交尾器の動きを詳細に観察し,交尾器の物理化学的特性の定量化を行い,これらのデータを考慮して共同研究者らと交尾器の動きをシミュレーションし,形-物性と機能の対応付けを進めている.昆虫交尾器のメカニクスに関する演者らの研究から,雌雄交尾器の形状や物理的特性の些細な変化でその相互作用の機能性が大きく変わり得ることを見出した.そのため雌雄交尾器は性淘汰の下で,断続的に変化し多様な形が維持され易いという新たな仮説を考えている.現在は昆虫交尾器のメカニクス研究の事例を増やし一般則を見出し,雌雄交尾器の多様化メカニズムの仮説検証を目指しており,本講演ではその概要をご紹介する.