| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S03-3 (Presentation in Symposium)
同じ場所に生育する異なる個体の年輪幅などの変動パターンの一致は,個体が共通して受けた環境の影響を記録している事に起因する。このことを利用した年輪年代学的手法は生態学的研究に有効と考えられる。本報告では,異なるアプローチによる応用事例を紹介する。1)変動パターンの照合(クロスデイティング)による,ブラックスプルースの根系発達プロセスの解明:アラスカ中部の永久凍土上に成立するブラックスプルース林を対象に,側根の深さと発生年代および肥大成長の停滞する年代を根の年輪より明らかにした。復元した根系の発達過程と,火災後の土壌腐植層の発達および永久凍土融解深との関係を考察する。2)年輪幅と気候要素の関係解析によるスギの肥大成長を制御する気候要素の解明:日本各地においてスギの年輪幅,早材幅,晩材幅について地点を代表する時系列であるクロノロジーを作成し,気候要素との相関分析を行った。その結果,冬〜春の気温がスギの年輪幅に影響する主要な要因であることが明らかになった。加えて,生態系炭素収支データとの比較や,13CO2パルスラベリングによる光合成生産物の追跡結果も併せてそのプロセスについて考察する。