| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S04-3 (Presentation in Symposium)
多様な生物で構成される生物群集に含まれる個体群の動態を規定するメカニズムを理解することは重要な課題である。しかし、原核生物の個体群動態と代謝基盤の関係についての理解は限られている。我々は120日間にわたる野外土壌生態系における原核生物個体群動態から個体群の安定性、潜在的代謝機能、生活史戦略形質の関係を調べた。その結果、個体群の安定性と潜在的代謝機能は正の関係が見られ、アミノ酸や核酸生合成経路が個体群の安定性と関連することが示された。また、時系列因果推論によって相互作用を推定した結果、個体群の安定性が高い生物が他の生物に与えている相互作用の数は相対的に少なかった。さらに、個体群の安定性が高い生物は相対的に低い成長・減衰率を示し、最大個体群サイズは大きかった。これらの結果から、土壌生態系における個体群が安定した原核生物は多くの代謝経路を持ちアミノ酸や核酸の生合成機能が高いために大きな個体群サイズを実現することで個体群が安定することを示唆している。本発表では、他の生態系で同様の検証をした結果を示し、これらの結果と、ゲノム合理化、特に黒の女王仮説の議論を展開する。