| 要旨トップ | ESJ71 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S04 3月19日 9:00-12:00 Room D
次世代シーケンサーの登場以来、生物群集に関する膨大なデータが蓄積されるようになり、群集集合の原理に関する理論的予測を検証する機会が拡大してきている。特に、土壌や水圏といった環境中に存在する微生物や、動物や植物を宿主とする共生・寄生性微生物の群集を網羅的に分析できるようになったことで、数百・数千種で構成されるシステムの安定性を物理学的な基本モデルに照らし合わせて分析できるようになってきた。また、ショットガンメタゲノミクスによって群集を構成する各種の資源要求性や機能を推定するだけでなく、メタトランスクリプトーム解析によって群集レベルの生物機能を局所個体群間で比較することも可能となっている。こうしたゲノム科学的基盤の浸透により、群集集合や生態系機能に関する基礎理論が検証され、淘汰される時代を迎えている。
もし、システムに「多重安定性」が存在するのであれば、「代替安定状態」間のシフトという形で、劇的な群集構造の変化と生態系レベルの生物機能の変化が起こることとなる。こうした過程の理論的解釈と検証こそが、多種で構成される複雑なシステムの振る舞いを本質的に理解する異分野融合科学へとつながっていくと期待される。
本シンポジウムでは、生物群集の多重安定性と生態系機能について私たちが何を知り得るのか、ゲノム科学・情報科学・物理学を融合する観点で議論する。第一線で活躍する実証系研究者と理論系研究者に今回お集まりいただく。マルチオミクスによる生態系機能推定、力学系モデルによる群集動態のエッセンス抽出、統計物理学的アプローチによる多重安定性の検出、非線形力学による未来予測、代謝モデリングに基づく種間作用ネットワークの推定、時系列因果推論に基づく鍵因子の検出等、内容は多岐に渡り、そして濃密である。まさに今、群集・生態系というレベルの現象を理解する科学が花開いていく興奮を会場と共有したい。
[S04-1]
趣旨説明: 生物群集の多重安定性と生態系機能の制御可能性
Introduction: Multistability of communities and controllability of ecosystem functions
[S04-2]
食がもたらす腸内細菌叢の多重安定性とその機能
Diet-induced multistability and functional role of gut microbiota
[S04-3]
土壌細菌群集における個体群変動性を規定する代謝メカニズム
Fundamental metabolic mechanisms determine the temporal variability of the prokaryotic populations in soil ecosystem
[S04-4]
エネルギー地形から見たレジームシフトとレジリエンス
Regime shifts and resilience from an energy landscape perspective
[S04-5]
淡水細菌群集の代替安定状態と再帰的なレジームシフト
Alternative stable states and recurrent regime shifts in freshwater bacterial communities
[S04-6]
多種共存理論の数理モデル
Mathematical models of multispecies coexistence theory