| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S04-4  (Presentation in Symposium)

エネルギー地形から見たレジームシフトとレジリエンス【O】
Regime shifts and resilience from an energy landscape perspective【O】

*鈴木健大(理化学研究所)
*Kenta SUZUKI(RIKEN)

 アトラクタ構造をデータから抽出し、将来予測や因果関係の推定を行うEmpirical dynamic modelingと同じように、力学系の大域・確率的な構造を抽出し、より広い時空間スケールでの予測や構造の理解に利用するアプローチが考えられる。エネルギー地形解析はこの手法の一形態と解釈できる。こうしたデータ駆動動態モデリングと次世代シーケンサーを始めとした進展目覚ましい観測技術を併せ、多種系生物群集を対象とした新しい研究の道が拓かれつつある。これは広い観点から見れば、理論科学(第二の科学)と対比して、データ科学(第四の科学)の流れに含まれるだろう。
 代替安定性、(カタストロフィック)レジームシフト、レジリエンスといった概念は、その由来から決定論的力学系(理論)と強く結びついている。こうした理論的な基礎の重要性はゆるぎないものであるが、現実の多様な群集をデータから理解するためには、非平衡・状態アンサンブル、またそうしたプロセスを通じて観測される大域安定性など、よりランダム性に重きを置いた観点が必要と思われる。
 本講演では、具体例を通じて理論とデータの視点を橋渡しし、概念の整理を行いたい。また、より実践的な側面として、エネルギー地形解析をレジームシフトの早期警戒シグナルやレジリエンスの定量評価に利用する方法について、これまでの進展を紹介したい。


日本生態学会