| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S05-2 (Presentation in Symposium)
フードシステムとは、食料の生産から流通、消費、リサイクルに至る食料に関わるあらゆる過程を含んだ全体的体系を指す。従来持続可能な農業は、農業生産現場の農法の問題ととらえられがちであった。しかし、持続可能な農業の実現には消費者の理解や政策的支持が不可欠であるうえ、現行のフードシステムにおいて最もエネルギー消費が多いのは流通部門であるなど、食農環境問題の包括的な解決には、フードシステム全体の持続可能性を問わねばならない。すなわち「持続可能なフードシステム」とは、食料の生産、流通、消費に携わるあらゆる人々の生活と過程が生態的に健全で、経済的に実行可能であり、かつ社会的に公正性であることに加え、将来の世代を含む地球上のすべての人々が十分に食べることができるフードシステムを指す。アグロエコロジーは、持続可能なフードシステムを開発、実現するために「科学」「実践」「運動」を統合的に用いる営みで、生態学に基づく農生態系管理、超学際的な知識の共創、および参加・行動型研究を重視する。超学際的とは、科学的な知識だけではなく、農業者の五感や日々の観察や経験に基づく地域固有の知識、先住民の伝統的な知識などを尊重し、新たな知識を共創していくことを意味する。参加・行動型研究は、特に従来の研究では除外されてきた人々(例えば小規模農業者、農業労働者、女性、少数民族など)の声に耳を傾け、研究の企画から最終的な結果の評価にいたるあらゆる過程に可能な限り参加してもらう手法で、現場で受益者が直面している問題を根本的・長期的に解決することを目指す。また、アグロエコロジーは農業者の生活や農民運動に焦点をあてて、ひたすら利潤を追求する企業による「取り込み」に対抗する。持続可能なフードシステムへの転換を促すため、「グリースマン・スケール」(Gliessman 2015)、「アグロエコロジーの10要素」(FAO 2019)、「アグロエコロジーの13原則」(iPES FOOD et al.2021)が提案されている。