| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S05-3  (Presentation in Symposium)

農生態系・多様性・安定性とアグロエコロジカルな食農のデザイン【B】【O】
Agroecological design of agri-food systems based on agroecosystems, diversity and stability【B】【O】

*日鷹一雅(愛媛大/院農学研究科)
*Kazumasa HIDAKA(Agroecology, Ehime Univ.)

アグロエコロジーは、私たちの食と農について、生態学の理論や知見を駆使し、その持続可能なあり方を問い続ける。食の在り方を問うのに、まず栄養学的には、雑食者ヒトの三大栄養素は炭水化物、蛋白質、脂質であるが、特に炭水化物は第1栄養素として位置づけられる。なぜなら炭水化物なくして働くための活動エネルギーが得られず、その他の栄養素獲得のための生産、狩猟採集、分配、加工調理ができなくなり、充分な栄養を私達は得られないからである。例えば、食料自給率というフードシステムの重要指標は、炭水化物と強く連関する穀物自給率で表され、日本の自給率は現在カロリーベース38%、穀物28%であり、世界中で最低レベルで、この約半世紀低迷を続けている。「何をどう獲得し分配し食するか?」というシステムの点では、食だけでなく、投入エネルギー収支を含め総合的な食農システムを再構築するのが肝要だろう。ここでは、生態学における中心ドグマでもある、多様性と安定性の関係性の視点から、どのような食農が日本に必要なのかについて、農生物多様性(agrobiodiversity)、食料獲得の多様性(agrodiversity)、主に純一次生産力に関連させた景観多様性、自給率などでみる地域多様性、そして生物多様性などの諸視点から俯瞰する。日本列島の多島、複雑多岐で隔離がち地形、アジアの東端の文化歴史的多様性という生物地理学的特性を考えると、慣行vs有機に代表されるようなα多様性レベルの発想だけでは自給力を取り戻す見込みはない。里山里海里川に代表されるようなβ多様性レベル以上の景観レベルでの農生態系と郷土食重視が自給率向上の鍵を握る。すなわち日本列島のような場合はγ多様性(地域レベル)の風土レベルともいうべき食農多様性を第一のモジュールに置けば、実質的な自給率は向上するであろう。アグロエコロジーは、衣食住の多様性における在来性を尊重し、その保全的実践も重視するが、今後の攪乱的環境変動を考慮すると重要な示唆に富んでいる。


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