| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S05-4  (Presentation in Symposium)

アジア的食農文化とアグロエコロジー【B】【O】
Agri-Food culture and Agroecology in Asia【B】【O】

*宮浦理恵(東京農業大学)
*Rie MIYAURA(Tokyo Univ. of Agriculture)

 東南アジアはモンスーンによる季節的降雨と多様な地理的環境下で、多くの民族がその地の自然資源を利活用し、食と農をめぐる知識と技術を収斂させて農業生産基盤を醸成してきた。現在、伝統的・地域特異的な人の営みから、国際マーケットに直結する商品作物ビジネスまで、幅広い食農システムが展開されている。
 東南アジア地域の持続可能な食農システムのための生態学的検討のためには、生産規模の大小(大規模経営・小規模経営)、経営方式(家族経営・企業経営)、生産物の仕向け(自給・販売目的)等の組み合わせによって枠組みを規定することが有効である。例えば、自給を主体とした小規模家族経営は、労働集約型の農生態系の管理を行い、当該地域の資源利用と維持、労働交換、食と農にかかわる技術と文化の集積が重要な要素となる。これに対し、大規模企業経営は商品作物を効率的に生産することが目的となるため、世界経済に大きく左右され、地域の環境や労働者の権利や福祉に対して長期的な持続性を担保するシステムを採用することが求められる。地域の中に様々なタイプのシステムがモザイク状に分布することが多く、各枠組みで検討すべき持続可能性の指標が異なる。そのため、アジア的食農文化を基盤とした長期にわたる安定的生産と消費に関するフードシステムを追求するには、地域の農生態系の構造と機能をアグロエコロジーに基づいて理解することが重要である。
 本報告では、インドネシアを例にして高地野菜作地帯の販売用の温帯野菜の混作栽培事例、低地の水田―養魚―畑作の統合システムを紹介するとともに、ポストコロナに起こっている有機農業生産と消費の拡大とそれに伴う生産の技術的・社会文化的適応および生産者と消費者との連帯(solidarity)の可能性について検討する。


日本生態学会