| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S05-6 (Presentation in Symposium)
景観構造は生物多様性に大きな影響を及ぼしている。自然生態系においてもそうであるが、農業など人為的影響が加わる場合、景観構造と生物多様性の関係はより複雑になる。例えば、里地里山の景観モザイクなどが二次的自然の生物多様性を向上させていることが知られている。実際に、同じような農法が実施されていても、平場地域と中山間地域を比較した場合、より複雑な景観構造を有する中山間地域のほうがα多様性、生息地間のβ多様性、生息地全体のγ多様性の全てにおいて高い値を示す。
現在、SDGsに代表される持続的な社会システムの構築が求められている。農業分野でも持続的な食糧生産システム構築の動きが活発である。日本においても、みどりの食糧システム戦略により、2050年までに化学農薬利用を50%低減、有機農業の取組面積を25%拡大することを目標にしている。このような動向から、生態系機能を活用した生産システムの構築が喫緊の課題でもある。害虫を抑制する天敵を有効活用する技術や、ポリネーションサービスを効率よく受けるための技術開発などはその代表的な研究であろう。しかし、景観構造を考慮しないと機能を十分に発揮できない。本報告では、野外で調査された生物データを活用した全国レベル、および地域レベルの解析から、景観構造と農生物多様性の関係を示す。さらに、生態系機能の発揮は、その景観構造や立地によって、大きな違いがあることを報告する。景観構造を考慮しながら、生態系機能を活用する重要性について議論したい。